ちょっと焼酎豆知識
これだけは知っておきたい黒糖焼酎の豆知識
焼酎の華
一年のうちでもっとも急激に冷え込む時期といえば、九州で十月から十二月、東京以北では九月から十一月にかけてです。月の平均気温が五℃〜七℃くらいづつ下がっていきます。
焼酎のお湯割りが恋しくなる季節ですが、この時期になると稀にフワフワとした白いオリが焼酎に現れてくることがあります。バルミチン酸エチルやリノール酸エチルとった高級脂肪酸エチルエステルと呼ばれる焼酎の旨味成分が折出したものです。
焼酎に含まれるこれらの旨味成分はアルコール度が高いほど、温度が高いほど多く溶け込む性質を持っています。リノール酸エチルを例にとれば、四十℃の焼酎と二十五℃の焼酎では溶解度が十倍も違います。温度が二十℃下がれば五分の一位しか溶けきれなくなるのです。
この焼酎の華と呼ばれるオリを出さなくするためには、低温でオリをあらかじめ折出させたあと濾過して瓶詰めすれば防ぐことが出来ますが、それでは味が薄っぺらなものになってしまって、焼酎の特性を失う事になりまねません。
オリを出さないようにするべきか、焼酎の特性を生かすべきは、メーカーにとっては辛いところですが、伝統的な味わいを重視する焼酎ほど、この悩みが深くなります。
たとえば九月の九州で、二十五℃で瓶詰めされた焼酎が北海道へ送られれば、すぐ温度が八℃下がってしまいます。一ヶ月もすればさらに七℃も下がってしまいます。いつもなら溶けきれなくなった旨味成分でわずかに白濁するだけですむところが、この急激な温度変化で折出してオリになるのです。
この焼酎の華ができるためには、旨味成分を多く吹くんでいること、急激な温度低下、そして直射日光に当たらないなど保管条件がいいことの三つの条件が必要になります。このような焼酎は美味さをふんだんに含んだ品質の証ともいえるもので、そこに焼酎の華と呼ばれるゆえんがあります。この華は暖めれば簡単に溶解してしまいますので、焼酎の味わいが変わることはありません。
本格焼酎の良さはその生まれた風土のかおりを漂わせているところにあります。オリを完全になくすことは、その焼酎から風土の味わいを取り除くことにつながりかねません。逆に、今ではめったに見ることのできなくなった焼酎の華を積極的に蘇らせた焼酎があってもいいように思われます。それによってメーカーはハムレットの悩みから開放され、愛飲家は焼酎の醍醐味に触れることができるでしょうから。
日本酒造組合中央会

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